ごく最近までは、特許権などの知的財産権を活用して事業を行うのは、いわゆる大企業だけでした(自動車、家電(IT)、製薬等のメーカーでは、特許権なしに事業を行うことはおおよそ考えられません)。一方、産業の高度化に伴って、15年程前から「知財立国」等の言葉が登場して、それまでは知的財産権と関係の薄かった中小企業や大学等に対しても知的財産権の活用が推奨されるようになりました。
しかしながら、知的財産権の制度は特定の目的のために人工的に作られたものであるため、通常の常識等に基づいて直感的に理解することは難しいと思います。更に、制度が複雑なので、新聞やニュースなどで見聞きする情報からは制度の全体像が理解困難であって、却って混乱する結果になることも多い等、結果として知的財産の活用は敷居の高い存在と思います。
他方、大抵の事柄と同様に、その”勘所”を理解することによって特許法等を詳しく理解しなくても知的財産の活用を現実的なものにすることができると思います。そして、最も良い知的財産の活用の教室は、知財活用の最前線である大企業の知財部の居室であって、そこに3ヶ月も居ればその全体像を理解することができますが、これは望んでもできることではありません。
このため、この教室では、知的財産の活用において頻繁に登場するキーワードを中心にして、その基本的なご説明をさせて頂いた上で、そのキーワードが関係する事例について参加者間で討議して頂くような形式を採ることで、実際に知的財産を活用する側から諸々の知識に接して頂く機会を提供できればと考えています。